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かぼちゃは冬至でも食べるしネ!モノは言いようです。
というわけで、久々にちゃんとリビカなバルコノSSです。
てかリビカな描写が一箇所にかないあたり…私の中でリビカでも二つ杖でもどっちでもかわらんわいって扱いなんだと思ってください。(良い方に無理やり解釈)
まぁ、やっぱりパロなわけですが、お話の中でなんとなーく関係が伝わればいいなーと思てます。
そして今回ちゃんと(食べ物以外の)テーマがある!
「コノエ、尽くす愛!」
コンセプトは健気なお子様です。
ピュアエンゼル的なそれです(真顔(←大丈夫か
バルコノSS:闘牙賛牙なパロ
タイトル:「藍閃での初めての夜に・コノエ編」↓
慣れない広い部屋と大きなベッド。
初めての北国の夜は、昨日までの闇よりも暗く寒い気がした。
しかも今日は、風が強いのだと案内してくれた闘牙見習いの青年は言っていた。
ざわざわと揺れる枝が、窓の隙間からゆらゆらと影を落とすのが怖くてコノエはカーテンをしっかりと閉めた。
部屋の主に先に休んでいる様言われたので、コノエは湯をもらい用意された寝巻き(雌が着るワンピースのようだった)を着て、寝床に入った。
だが、眠れない。
疲れているはずなのに、灯りを消して目を閉じて柔らかな布団に身を預けて眠ろうとしても、ざわざわヒューヒューという風の音が耳につき、瞼は重く閉じているのに神経はよりはっきりと冴えていくのだ。
身体は、3日間の旅と、略式とはいえ多くの人目に晒された誓約式の疲れでぐったりとしているのに、心がそわそわとして、魂だけが体から抜け出て歩き出すような気すらした。
おかしな不安、慣れない場所で1匹ということもあるのだろう、コノエは眠ることを諦めて枕もとのランプに灯りを点し、部屋の主である自分のつがい、伴侶たる闘牙を待ちわびた。
掛け布団の下の毛布だけをずるりとひっぱりだし、蓑虫のように身体にまきつけて布団の上で膝を抱えて小さくなって座った。
風の音も、彼が、バルドが来たら怖くなくなる。
だから、大丈夫だと、コノエは自分に言い聞かせた。
半時間ほど経っただろうか、コノエの伴侶はまだ来ない。
仕事があるのだと言っていた、長く留守にしていたのだから、仕方が無いのだろう。
だけど疲れているだろうに、もしかして自分と眠るのが嫌なのだろうかと、小さな不安がチクリと胸を指す。
いや、大丈夫。
コノエは、不安を振り払うようにプルプルと頭をふった。
バルドは自分を嫌ってはいない、喜んで伴侶に…とまではいかなくても、きっと嫌われてはいない。
だって、彼はいつも自分に優しくしてくれた。
いびつな、成りそこないのような賛牙である自分を、賛牙であるとすら知らなかった頃から、いつも彼の笑顔と掌に救われてきた。
コノエは懐かしい記憶をたどり始めた。
初めて言葉を交わしたのは、もう10年も前、まだ、バルドに髭は生えていなかった。
修練場での仕合の最中、腰の飾り紐が切れて綺麗な青い石がコノエの目の前に飛んできた。
鮮やかな青は、秋の高い空を写し取ったかのようだった。
コノエがそれを差し出すと、バルドが大きな手で頭を撫でてくれたのだ。
「ありがとうな、おちびさん。親父さんの手伝いで来てるのか?まだちっこいのに、偉いぞ。」
賛牙院に来たばかりでまだそこにいる意味すら知らなかった自分、偉いなんて褒められたのは初めてだった。
あれが、刷り込み…っていうのかな。
それから、コノエはバルドの姿を見かけるといつも目で追うようになった。
目が合うと、バルドは笑った。
時々、お菓子をくれた、内緒だぞと片目を瞑って。
微かだった父の記憶に、バルドの掌の温度が重なった、だから自分はバルドに懐いたのかもしれない。
それがいつのまにかこんな…こんなに愛しい気持ちになった。
ふぅ、と溜息を付くとコノエは巻きつけた毛布はそのままに靴を履き、毛布が床をひきずるのも構わずそっと部屋を出た。
賛牙院のような絨毯や重厚なベルベットのカーテンは無い、石造りの重々しい内装は窓から夜の闇をそのまま受けていっそうシンと静まり返り、時折風の音が高くヒューと鳴るものだからコノエは部屋を出たことを少し後悔した。
元々、つがいとして自分がつりあわない事はわかっていたのだ。
年もとても離れていて子供だし、何より雄だから、子供を作ることが出来ない。
バルドが雌の伴侶を持ちたいと言ったならそれは事実婚という形ではあるが認められ祝福されるし、賛牙である自分も認めなければならない。
賛牙と闘牙としての関係を最善に保つ手段、それが、藍閃の賛牙と羅刹の闘牙との婚姻だ。
異性であったならまた事情も異なっただろうが、同性であるが故にいびつな賛牙である自分とバルドとの婚姻は羅刹に受け入れられたのだ。
賛牙を持つことは闘牙にとって、力と格の高さの証明になる。
だからこそ、刹羅は賛牙を得るたびに内へ外へ、その存在を誇示しする為誓約式を行うのだ。
今回は、自分が幼いこと・人馴れしていないことを建前の理由に略式で行われたが、実際は自分が至らないからなのだろう、誰も何も、言わないけれど。
もし、コノエの力が及ばず命を落とすことがあったとしてもバルドは生き残ることが出来る、その強さを持っている。そして、相手がバルドに限定されるコノエとは違って、相手を問わずに力を与えることの出来る賛牙は他にも…いる。
コノエの替えは、多くはないが確かにあるのだ。
認めなければいけないし、覚悟もしておかなくてはいけない。
ならばせめて、少しでも彼の役に立ちたいし、側に居たい。
コノエは小さい蝋燭の灯りをたどって、バルドの執務室へ向かう。
確か、北の棟の2階の一番手前だったと思うけれど…。
そこには中央棟を上がり降りていく回りくどい階段を使わなければいけなかった。
毛布をひきずりながらヨイショヨイショと階段を昇るコノエの姿は、
二つ杖の伝説にある座敷童子のようだったと目撃した若い闘牙は言う。
「何者だ!」
階段の上から眩しい灯火と威嚇の声を向けられ、コノエは身を竦めた。
「あ、あの、コノエ、です。今日からここに、きた。」
「え、あー…1隊長殿の奥さん!なんだ、何かと思ったっすよ。」
明るい色の髪と髭の青年は、はっはと笑い剣を収めた。
奥さん、という言葉にコノエは少し戸惑った、頬が熱くなる。
「どうされました、迷われましたか?」
彼の影からもうひとり、美しい黒い髪の青年が現れ、コノエの前で膝を折る。
優雅な仕草にほぅとコノエは小さく吐息をついた。
「あの、バルド…さんのところへ。」
コノエの言葉に青年達はにこりと微笑みあうと、意外と力があるらしい黒髪の青年がコノエをひょいと抱き上げ、バルドの執務室の前まで連れて行って下ろしてくれた。
「ありがとうございました。」
ぺこりとコノエがおじぎをすると、明るい髪の青年が耳打ちした。
「隊長に、張り切って無理しなさんなって伝えてください。」
「え、はい、わかりました。」
部下の人にも好かれてるんだなぁと嬉しくなってにっこりするコノエに、あれ?と微妙な顔をする青年。
「ジャック、奥方に失礼だ。」
溜息をつきながら黒髪の青年が、ゴンと相方の頭を遠慮なく殴った。
「…!!」
「?」
首をかしげたコノエに、青年達はにこやかに、あるいは健気に笑顔で会釈をし去っていった。
「…?」
やっぱり首をかしげるコノエは、青年達の伝言が夜のお勤めに対するものだとは気づいていない。
コンコンと遠慮がちにノックすると、バタバタッガッタンと音がして「どうぞー」とバルドの声がした。
何の音だろうとコノエが遠慮がちに扉を開けると、バルドは机に肘をついた姿勢で笑って迎えてくれた。
「おー、どうした?」
「あ、あの、風が強くて、その、部屋も広くて、えと、ベッドも…」
先ほどまで、散々怖いだの寂しいだのと思っていたのに、仮にも16の成猫がそれ言うにはすごく恥ずかしい気がして、コノエは言葉を濁した。
「なんだ、眠れなかったのか。」
「うん。」
今日は風も強いしなー、と呟きながら紙の束に何か書き綴って束ねていくバルドを見てコノエはほっとした。
小さな暖炉の炎の柔らかなオレンジ色、それだけでは無い温もりが感じられる、バルドのいる部屋の中はとても暖かかった。
「あの、眠くなるまでここにいても、いい?邪魔、しないから。」
「ああ、冷えるとよくない、暖炉の前行きな。」
「うん、ありがと。」
コノエはバルドに背を向けて暖炉の前に座ると、靴を脱ぎ足先をさすりながら膝を抱えた。
バルドの視界の邪魔にならないようにと、なるべく小さくなり、もぞもぞと毛布で身体を覆い隠す。
後ろからはペンを走らせる音と、紙のこすれる音が聞こえてくる。
そっと、振り返ると眉間に皺を寄せて伏目がちのバルドがペンを走らせている。
初めて見る表情に、コノエは得した気分になって妙に気恥ずかしくて、冷えてしまった手と足先をこすり合わせる。
こうやって、バルドとずっと一緒にいられたらいいなぁ…。
膝に両手とを乗せながら、コノエは暖炉の温かさにうとうとと目を閉じた。
カタン、と椅子の動く音が最後に聞こえた。
気づくと背中が少し重くて、温かい。
はっと顔を上げると、目の前には眠るバルドの顔、
コノエは毛布ごとバルドに抱えられるようにしてその片方の膝の上で眠っていたらしい。
ど、どうしよう。
藍閃からの旅の途中、肩を抱かれて眠ることはあったけれど、こんな風に全部包まれるように抱きしめられて眠るのは初めてだった。
俺は、嬉しいけど、でもバルドの膝が痺れるだろうし…。
バルドに言えば鍛えているからと笑うだろうか、このまま甘えていていいと言ってくれるだろうか。
だけど、当のバルドは眠っていて、起こすのはもっと悪い気がして、コノエはせめて毛布を着せるだけでも、とそっとそっと毛布を2匹の間から動かし始めた。
静かになるべくそっと身体を動かすとバルドの体が揺れて、少しだけ距離が開いた。
むにゃむにゃと口元を動かすバルドを愛おしげに見て照れながらも、器用に毛布を全部巻き取るとバルドの肩越しに手を伸ばし、その背にふわりとかけた。
バルドの右腕は立てられた右足に、左腕は自分の肩にまわしながらドキドキしながらさっきより深くバルドの膝に座った。
うつむいて眠るバルドの顔がすぐ横にある。
へへ、と小さく笑うとコノエは抱えた左腕の先、バルドの指に嵌る指輪に目を留める。
重ねた自分の左手の薬指にも、バルドと同じ細い金色の指輪。
表面には小さな飾り文字で「我と汝、剣と歌、常しえに寄り添うもの也。」、内側には自分とバルドの名前が彫られている。
夢見ていたことが、現実になったのだ。
この願いが叶えばいいと思っていた、だけど叶うはずがないとも思っていた。
やっと、実感が湧いてくる。
バルドのよりとても小さな自分の左手で、きゅっとバルドの左手を握ると甘えるように頬ずりをする。
コノエの心そのままに、しっぽはバルドの腰にそっとまきついた。
幸せだと、思った。
胸の中から溢れてくる何かが涙になって頬を伝う。
バルドにばれないように慌てて頬と目元をぬぐい、小さく鼻をすする。
幸せなのに、泣いてしまうのが自分でも不思議だった。
少しずるいけど、バルドが眠っている今だけは、本当の恋猫のように寄り添ってもいいだろうか。
コノエはバルドの唇の端にそっと触れた。
今だけ、だから。
そう呟いて、自分の唇を重ねる。
それがコノエにとって正真正銘初めてのキスだとは、夢見る間抜けな闘牙は知らない。
バルドとずっと一緒にいたいと願ったら、それは叶うだろうか。
自分に都合のいい夢を描きながら、コノエは再びまどろむ。
バルドに触れている背中は暖炉に照らされた顔よりも熱い、気がした。